Sunday, November 27, 2011

薫衣香(くのえこう)


昨年秋に初めての着物と帯を購入してから1年がたちました。「ステキ!」と思うものを、お財布と相談しながら、少しずつ購入していたら、今ではなんと、着物と帯は6枚ずつ、長襦袢は3枚、帯揚げや帯締めなどの小物は数えきれないくらいになってしまいました。全て、桐の衣装ケースに入れて大切に保管しています。

本来10月に入れば、袷の着物を着る時期なのですが、今年はなかなか涼しくならなかったので、着ることをためらっていたら(汗だくになってしまいますし、絹は汗に弱いのです)、もう11月末。ここにきてやっと晩秋らしくなってきたので、昨日今日と着物を着て出かけることにしました。

袷の季節は10月から5月です。今年最後に袷の着物を着たのは5月末。約半年ぶりに桐の衣装ケースから出した着物に袖を通すと、なんとなく匂いが気になってしまいました。その匂いを例えると、桐の匂いとたとう紙の匂いと埃の匂いの混ざったような感じでしょうか。洋服ならリセッシュなどをふりかけたり、肌に香水をつけてごまかすところですが、絹100%となるとそれはちょっと躊躇してしまいます。

匂いをとるためにはどうしたらいいのかしら。防虫香を使おうかしら、それとも白檀などの匂い袋にしようかしら。そう思って探していたら、銀座 香十さんにの「薫衣香」にたどり着きました。そして今朝、銀座で購入してきました。

「極上薫衣香」。小さな包み(約4cm x 3cm)の7包入りで、約2600円です。タンスなら引き出しの左右の隅に1包ずつ、衣装ケースなら1包を入れれば十分で、香りは約半年から1年も持続するそうです。

さっそく、各衣装ケースに1包ずつ入れてみました。香りを例えると、お焼香の香りでしょうか?とても落ち着く香りです。衣装ケースの蓋をとしたというのに、ほんのりと香りがもれて、部屋の中に優しく漂っています。次回、着物を着るときに、どれくらい香りが移っているかしら?と、今からとても楽しみです。

〜下記は薫衣香に同封されていた説明書より〜

香十の薫衣香

かつて平安時代、雅な香りの文化が優美な花を開きました。貴族の館で華やかに繰り広げられた季節を愛でる宴、深い教養溢れる歌合、趣のある文の行き交い、そして、各家秘伝の香りを優雅に競う「薫物合(たきものあわせ)」。

香りは、皆で楽しむために、人をもてなすために、身だしなみのために、生活文化として活用されてきました。衣服や文(手紙)に香りを移すことも雅やかで嗜み深い教養であり、暮らしの知恵でもありました。

本品は、平安時代に、「衣のためのお香」として使いわけられてきた実用的で伝統ある「えび香」「薫衣香」を現代に継承し製品化したもので、天然の香原料(桂皮・白檀・丁字など)を用い、受け継がれた調香技術で創り上げました。

香りを衣類などに移す優美な香り文化の伝統を今日に伝える製品としてご愛用ください。






Friday, November 25, 2011

新しいシャンプー


まずは説明させてください!この3つのシャンプーを!

「某ロクシタン(真ん中の緑のやつ)」
「某せっけんシャンプー(右の水色のやつ)」
「某ケラスターゼ(左のピンクのやつ)」

今は、そんなにキチキチやってないんだけど、その昔(約10年前ね)、ものすごくストイックなヴィーガン生活してたんです。だしもダメ、さとうもダメ、肉魚なんてありえねー!っていうね。もちろんシャンプーとか石鹸とか肌にまとう洋服系もね、ナチュラルがいい的な。

ちょっと前までは「某ロクシタン」を使ってたんですが、つい先日、ふとそのストイックな頃を懐かしく思った瞬間があって、「某せっけんシャンプー」に手が伸びたんですよ。で、使ってみました。そしたらもう、大変なことになってね。髪はもうゴワゴワ。指が通らないくらい、カッシュカッシュなんですよ。キーキーキーって鳴ってますよ、髪を撫でるたび!痛いですしね、指が通ると! 

洗浄力抜群の石鹸成分ほぼ100%のシャンプーですからね、仕方ないんですけどね。カラダにいいのかもしれないけど、ココロにかかるストレスが半端ない! 人は、ココロとカラダとそしてスピリットで出来てるわけで、いくらカラダにいいと言われても、ココロにかかるストレスには耐えられないんですよ、このカッシュカッシュ感がっ!!!

あまりにも手触りがゴワゴワでひどくて、乾かしてもかなりブワって広がるしね、今日、サロンへ行ってきました。若いイケメン・スタイリストに相談したら「某ケラスターゼのシャンプー(ピンク色のやつ)」を買わされちゃった。ははは。

中庸が大事ですよね。そんなにキチキチしなくていい。テキトーに。ナチュラルもケミカルもいい感じで、真ん中あたりがいいんですよ。仏教では常識を外れると「罪」だと言いますしね。極端なナチュラル志向も「罪」だし、かといってあまりにもケミカルに走るもの「罪」でしょう。

と、自分に調子よくまとめたところで、これからは、某ロクシタンも、某ケラスターゼも、某せっけんシャンプーも、いい感じで使っていこうと思いますよ。

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最近のわたしの書いてる内容、かなり浅いですよね。なんか書けないんですよね。でも書こうとするとこういう感じになっちゃう。ゴワーって湧き上がる衝動があるまで書かなくてもいいんでしょうけどね、なんか最近は穏やかでね、これはこれでいいことなんでしょうけどね、幸せボケなんでしょうかね。でも、過去にさかのぼって自分の書いたものを読むとね、中からこみ上げるものがぶわーって並んでいて、今のこれと比べるとなんかちょっと、「ダメだなぁ」と思っちゃったりね、してますよ。
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Wednesday, November 23, 2011

新しい靴


「スポーツの秋」とはいえ、スポーツは基本的に、イヤです。出来ないからイヤなんじゃありません。たぶん、何をやっても、とても上手です。(と、自画自賛。)ただ、苦しいんですよね、スポーツって。その苦しみを想像すると、なかなか「やりましょう!」とはならないという(笑)。

でも、やるからには、格好よくやりたいわけで。なので、だいたいいつも格好から入ります。今回は、「苦しみ」値の少なそうな「ウォーキング」に目をつけて、そのための靴、ウォークントーン(LA Gear)を購入しました。

FACT:今まで数々のスポーツ靴を購入しましたが、全てお蔵入りしてるわけで。今回もイヤな予感はします。例えば、社交ダンスシューズはもうありません。ジム用シューズは外履き用(=近所のスーパーに買い出しに行くための楽な靴)に姿を変えました。ゴルフシューズはもう履くことはないだろうけど「可愛い」を理由に観賞用となりました。

で、この新しい靴、先程、ちょっとだけ試着してみました。広告にやられているのかもしれませんが、他のスニーカーとは違って、足の内側・外側に負荷がかかっているような気がしたんですよ!

「これを履いてしっかり毎日歩けばいつの日かわたしもステキなbodyの女性に変身できるのね!」と妄想しつつ、これを購入したということでもうすでに大きな満足感を得てしまっているので、実際にウォーキングを続けることができるかどうかは、疑問。

いやはや、どうなることやら、ねぇ。
新しい帯

先日、初めてオンラインで帯を注文しました。格安(15,000円)ですが、新品・正絹です。実際に届くまでは、手触りも本当の色味もわからないので、不安もありましたが、購入して正解でした。黄色の訪問着は今年上旬に仕立ててからまだ一度も着ていないので、それに合わせて楽しもうと思っています。帯揚げ・帯締めはどれにしようかしら?と色あわせをするのが楽しい時間です。

(って、この写真たち、たぶん着物に興味のない人たちにとっては、「はぁ?」っていう、つまんないものなんでしょうねぇ 苦笑)



Sunday, November 20, 2011

ヴァイオリンコンサート


今日は母と一緒に天満敦子さんのヴァイオリンコンサート@利根町公民館に行ってきました。お恥ずかしながら、クラッシック音楽には疎いです。ヴァイオリンのコンサートも初めてでしたし、天満敦子さんがどれだけすごい方なのかということも知りませんでした。

(下世話な話で申し訳ないのですが、今回のコンサートは利根町区民館ということで、チケットは破格の1500円でしたが、通常は、例えば東京だと、紀尾井ホールでは6000円、オークラホテルでドリンク付きではなんと18000円なのだそうです!)

会場は満員御礼!オーディエンスの平均年令はちょっと高くて、たぶん60歳くらい。みなさん、煌びやかではありませんが、アーティストに敬意を表するに相応しいお洋服を着ていらっしゃいました。

彼女のヴァイオリンの音色ですが、これがものすごくいいんです。わたしはまったくの素人なので、ヴァイオリンの音色やその技術についてもわからないので、多くを語ることはできませんが、彼女の音色はものすごく感情に迫るのです。自然と涙がこみ上げてくるんです。

コンサートのプログラムは下記のとおり。クラッシック音楽に詳しい方たちは、タイトルを見ただけで、「ああ!あの曲ね!」とわかるものばかりだと思います。わたしのような素人でも、曲が始まれば、「ああ!あの曲ね!」と思う、かつてCMやら映画やらで聞いたことのあるものばかりでしたから。

アダージョ(バッハ)
ロンディーノ(クライスラー)
たいすの瞑想曲(マスネ)
アヴェ・マリア(カッチーニ)
アヴェ・マリア(シューベルト)
祈り(ブロッホ)
ホーム・スイート・ホーム(ビショップ)

―(トーク・休憩)―

愛のあいさつ(エルガー)
愛の讃歌(モノー)
トロイメライ(シューマン)
ルーマニア民族舞曲(バルトーク)
望郷のバラード(ポルムべスク)
ジュピター(ホルスト)

―(アンコール)―
見上げてごらん夜の星を
チャルダッシュ

「アヴェ・マリア(カッチーニ)」は、どこかから流れてくると条件反射で涙が出てしまうとても大好きな曲なので、ものすごく感激しましたし、今回初めて聴いた「ルーマニア民族舞曲」と「望郷のバラード」については、心を揺さぶられた!というか、大きなエネルギーの塊のようなものが体の中にどーんと入り込み、それが次第に大きなうねりのようなものになって、体の中を駆け巡るような感覚に陥り、震えました。

アンコールの「見上げてごらん・・・」の時にはヴァイオリン・ソロ。会場のライトを絞って、ほぼ真っ暗な中での演奏。会場のあちこちからすすり泣きの声が聞こえてきました。そして、ピアノ伴奏での「チャルダッシュ」では、たたみかけるような演奏に、会場はどんどん盛り上がってきて、最後は大興奮の拍手の嵐でフィニッシュ。ああ!

コンサートの後は、母と一緒に長い列に並んでCDを買い、天満さんにサイン&握手をしていただきました。「(このCDは)部屋を暗くして聞くと涙が止まらなくなるわよ。」と言って笑った天満さん。彼女の首の付け根の少し下は真っ赤に腫れ上がっていました。きっと長年弾き続けているので、ヴァイオリンの当たるその位置の皮膚はタコのようになってしまっているのかもしれませんね。

購入したばかりのCDを聴きながら、今これを書いています。オルガン伴奏で奏でる天満さんのヴァイオリンは、ピアノ伴奏のコンサートのものとはまた違った雰囲気ですが、ふくよかで感情がいっぱいつまっているように感じるその音色には、同じように感動させられます。

今日のコンサートに誘ってくれた母に心から感謝です。

Saturday, November 19, 2011

漢方薬


ここ1ヶ月、ツムラの漢方薬・「桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがんりょう)」を処方してもらって飲んでます。朝・昼・晩、空腹時が一番効果的ということで、たまに忘れる日もありますが、三日坊主にならず続いています。

飲み始めの1週間は、副作用でぐったり。漢方薬ってマイルドで、副作用なんてないと思っていたのでびっくり。倦怠感、吐き気などなど・・・とにかく辛いので続けられるか不安になりました。

でも2週間目からはその副作用がキレイさっぱり消えて、ポジティブな効果(冷え性改善)が見えてきました。

そしてしばらくして、さらにびっくり!普通ならPMSがひどい時期だというのに、暴飲暴食したいと思う衝動もないし、イライラも起こらない! 生理が始まってからも、生理痛や、それに伴う腰痛や下痢などはなくなり、出血量も少なくなった(気がしました)。

もともと、暗示にかかりやすい性格が吉と出たのでしょうか。それとも漢方薬が効いているのでしょうか。どちらにしても、不快な症状は軽減され、うれしい驚きでした。

先日、処方された漢方薬がなくなったタイミングでクリニックへ。ポジティブな効果を伝えると、「では、しばらくこれでいきましょう。これで子宮筋腫が小さくなることはないと思いますが、大きくなることを抑えることはできるかもしれません。もし、どうしようもないくらい大きくなってしまったら、もっとアグレッシブな方法もあるので、その時はまた一緒に考えていきましょう」と先生。

先生のいう「アグレッシブな方法」とはたぶん、ホルモン療法のことだと思います。もちろん、もう妊娠することは難しい年齢だとは思うのですが、ホルモン療法を行なって、完全にその道が断ち切られるということを受け入れるほど、まだわたしは円熟していないので(笑)、しばらくは漢方薬で様子を見たいと思っています。

世の中には「子宮筋腫切除」というオプションもあるのですが・・・お腹を切る勇気がないわたしです。子宮筋腫は良性ですし、共存していけるわけですから、よしっ!というわけにはなかなかいきません。カラダにタトゥーを入れる、ピアスを入れる、ということには抵抗がないわたしですが、それとこれとはかなり違うのですよ。

わたしのお腹の中の子宮筋腫のサイズは今もたぶん変わっていません。右側は8センチ弱、左側は4センチ弱。朝、目が覚めて、右側の下腹部を触ると、コブのようなものをしっかり感じることができます(苦笑)。

子宮筋腫はわたしのカラダの一部です。それを憎まず、「小さくなーれ」と優しく語りかけ、これからも漢方薬を飲み続け、経過を見守っていきたいと思います。

Sunday, November 13, 2011

ウォーキング



外を見たら清々しい秋晴れだったので、今朝はウォーキングをすることにしました。

前回のウォーキング(夏真っ盛り!)では1時間半歩いただけなのに、翌日は筋肉痛で歩くのが困難になるという悲惨な結果だったので、今回はそうならないようにしっかり時間&距離を測って歩こうと、Apple Storeで「ウォーキング」アプリ「健康増進アシストサービス」を利用することにしました。

橋を渡り、川沿いを歩き、約30分経過したところでUターン。来た道を戻り、家に到着したところでアプリを終了。

歩数: 5342歩
歩行距離:4380m
歩行時間:00:58:26
消費カロリー:237.24 kcal

前回よりは30分少ないウォーキングでしたが、十分でした。ほどよく汗ばみ、ほどよく心拍数もあがり、両足だけじゃなく全身の疲労感はかなりのものです。

何をやっても三日坊主になってしまうことが多いわたしですが、これを機に(最低でも)週1度のウォーキングをしよう!と思います。体調やその日の気分にあわせて、時間&距離を調節しながら、楽しみながら長く続けていきたいです。


Saturday, November 12, 2011

大掃除



季節の変わり目、秋冬と春夏の衣替えの時期には、大掃除をします。そして、秋冬の衣替えの後、11月には、もう一度、大々的に大掃除をします。これは10年前に風水にはまっていたころからの習慣です。そして今日がまさにその大掃除の日でした。

家具を動かして、普段は見えない場所に溜まっている埃をとります。家具の上、横、後ろと隅々まで水拭きします。ベッドの下に収納してある桐の衣装箱やお客様用のお布団にも風を入れ、アパートのあちこちにあるフィルターの掃除、フローリングの雑巾がけ、シーツやカーテンなどの大きなものの洗濯や、トイレやお風呂の水垢とりや、レンジの油汚れ落とし、玄関の水拭きなどなど。

そうこうしているうちに、「いらないもの」がたくさん出てきます。この1年間まったく使うことのなかったものたちには、この機会にありがとう&さよならです。窓を開け、風を入れ、室内に停滞していた空気を動かし、新しい空気と入れ替えると、部屋が今までより明るくなったように感じます。気分も明るくなります。

厄をきれいに払い落とすと、新しい良い気を吸収しやすくなると言います。今日、しっかり大掃除をしたので、これから迎える新年が楽しみです。今月末には実家で大掃除をしようかしらと思っています。家族みんなでよい新年を迎えたいですからね。

Saturday, November 05, 2011

綾鼓(あやのつづみ)


人生初・能&狂言を観てきました。

12:45 開場
13:30 狂言「栗焼」
- 休憩 -
14:15 能「綾鼓」
16:00 終演

狂言「栗焼」は、二人芝居。例えるなら漫才かしら。貰い物の栗を焼け!と言われた家臣が、栗を焼くんだけど、焼き上がった栗があまりにも美味しそうだったので、食べてはいけないと思いつつ、ひとつ口に入れたらそのあまりの美味しさに止まらなくなって、ふたつ、みっつ、よっつ・・・と40個全部の栗を食べてしまった! 家長に怒られたくない家臣は、なんと言い訳をしようと考えた末、とても良い案を考えた・・・というお話。振り付けも面白いし、テンポも速くて、所々で笑えて、まったく内容は知らなかったけど、楽しめました。

約20分の休憩の後、能「綾鼓」がスタート。

狂言とはうって変わって、大勢の演者が舞台上に登場。楽器演奏の人たちは4人。笛、太鼓が大・中・小。演奏者のお世話係が後ろにぴったりと張りついています。地謡(コーラス隊?)は8人。演者たちが所定の位置につくと、舞台の上に緊張感が張り詰め、会場もしーんと静まり返ります。そこに、物語を説明するナレーター兼脇約の人と、臣下役が登場。いよいよ始まりです。

場所は、皇居。そこに働く庭師の老人が、天皇の第三夫人に恋をして、貴族たちがこれを笑いものにするという、なんともえげつないストーリーです。

臣下が老人を呼びつけこう言います。「あの池辺の桂の木にくくりつけてある太鼓を打って、その音が皇居まで届いたなら、女御はお前に会ってもいいと言っているぞ!」老人は身分の違いの恋を恥じ、苦しみながらも、ひとめでも会うことができるのならばと、いそいそと桂の木に近づき、そして懸命に太鼓を打ちます。しかし、その太鼓には綾の絹が貼られていて、音がなるわけはありません。老人はしばらく必死に太鼓を叩いたあと、全てを悟ります。弄ばれたことを嘆き悲しみ、絶望し、そして池に身を投げ死んでしまいます。

臣下は女御にことの全てを伝えます。これを聞きショックを受けている女御の前に、恨みつらみで鬼と化した老人の亡霊が現れます。そして、「音なんか出るわけがない!お前が叩いてみろ!」と責め立てます。女御は泣き叫びますが、老人の亡霊は執拗に女御を責め続けます。そして恨みの炎は消えることなく、老人の亡霊は池の中へと消えていきます。

老人は生前はみすぼらしい身なりだったのですが、亡霊となった老人の着物は金糸・銀糸で飾られた煌びやかなもので、女御と並んでもひけをとりません。杖で床を叩き、足で床を叩き、舞台の上を行ったりきたり、髪を振り乱し、衣を翻し、老人の亡霊はその恨みの想いを女御に激しく訴えます。その想いの強さを、太鼓や笛や地謡の音が盛り上げていきます。

じゃーん!と最後の音が鳴り、舞台が終わります。そして会場はまたしーんと静まり返ります。その静寂の中、まずは老人の亡霊が、そして女御が、その後を臣下とナレーター兼脇役がしずしずと続き、舞台の袖へとすり足で消えていきます。ここで拍手が起こります。舞台中央に残った演者たちは、楽器を手際よく片付け、順番に舞台から消えていきます。そしてまた拍手が起こります。ここで会場はざわめきだし、なんとも言えない非現実的な時間から、現実へと引き戻されます。

一瞬たりとも目が離せない、あっという間の2時間半でした。ぜひまた戻りたい、神々しい時空間でした。