Wednesday, May 06, 2009

Guantanamera




久しぶりのデート待ち合わせは、17時。 

雨がしとしと降っていて、
駅までの長い道のりが憂鬱だったので、
環八でタクシーを拾い、隣駅まで向かった。

待ちあわせの場所に彼を見つけたわたしは、
いつものように、「お人形~っ」って抱きついた。

彼もわたしも、ストライプの服を着ていて、
「あ、おそろいね。」
ってわたしが言うと彼は、
「え? どこが??」
って最初、分からないよっていう顔をした。
「ほら、シャツがおそろい。」
ってわたしが言うと、
「あ、そうね。」
って彼が言って、その後、
「カバンも、ほら、おそろのやつだからさ。」
って、いつもどおり、くったくのない顔で笑った。

どこに行こっか。
こんな早い時間から開いてるお店ってあるのかな。
近場がいいよね。 雨だしね。


わたしたちは、行き先も決めないまま、歩き始めた。

「あ、踏み切りの近くに、 いつも予約でいっぱいで、
いつも入れないスペイン料理屋があるんだ。」
ってわたしが言って、
ダメもとでいってみようか、 っていうことになった。

ラッキーなことに、ドタキャンがあったらしく、
わたしたちは店内の中央の席に案内された。

「一緒だとラッキーなことが起きるね。」
ってわたしが言うと、
「お人形と一緒だからだよ。」
って彼がいって、
『お人形』って彼が言ってくれたことに、

わたしはものすごく嬉しくなっちゃって、
「そうね、お人形と一緒じゃなかったら、
ゼッタイに入れなかったよね。」
って言って、わたしはホクホク顔になった。

最初はいつも、生ビールを注文するわたしたちなのに、
せっかくだからねと、スペインの瓶ビールを頼んだ。
運ばれてきたタパスを数品を食べながら、
ふたりして、美味しいね、美味しいね、

って繰り返した。

外を見ると、まだものすごく明るくて、
なんだかいけないことをしてるような気持ちになって、
そんなキモチを吹き飛ばす勢いで、
わたしはタパスをほおばった。

わたしの好きな曲が流れてきた。
「昔、良く聞いたな・・・。」
ってわたしが言ったら、彼はそれを軽く無視して、
「たいしたもんだ。」
って言いながら、タパスを口に運び続けた。


そんな彼を見つめながらわたしは、
過去を共有できないことに対する諦めの気持ちでいっぱいで、
泣きそうになったけど、
激辛のタパスを口に運んだ後、
目の下に汗をかきながら、
「美味しい。」
って歓喜の声を上げた。


そして、

同じ時間、同じ景色を見て、
同じように良いって思えることほど、
素晴らしいことってないなって思って、
それがものすごく嬉しくて、
そうだ、それでいいんだ、
そうやってこれから先もずっとずっと、
そうやって生きていきたいって思った。

わたしが笑うと、彼も笑って、
わたしはこのうえない安心感を味わって、
大きな多幸感に包まれていた。

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