Sunday, May 10, 2009

三角公園




ずっと、近寄れなかった、実家から徒歩1分のところにある、公園。
それは、昔、彼といつも待ち合わせした、 場所。

先日、優しい春風に導かれるようにして、 訪ねてみた。

一歩一歩確かめるように、ちょっと怖いようなキモチで、

ゆっくりと足を踏み入れる。

滑り台で遊ぶ小学生たちの手には携帯電話が、
通り過ぎていく大人たちの傍らには愛犬が、
あのコロとは違う景色がわたしの目の前に広がってる。

わたしは、ブランコの周りを囲う柵にそっと腰掛けて、
空を見上げる。

ああ、これまで、いくつの出会いと別れを、繰り返しただろ。

急に、目の前の全てが白黒に変わり、足元がグラグラ揺れはじめた。
その瞬間、遠くから口笛が聞こえてくる。

誰もいるはずのないわたしの隣に、彼の気配を感じて、
わたしは顔を左に向ける。

いつもわたしの左にいた彼の輪郭がぼんやり見えた気がして、
わたしは、「ねえ」と声をかける。

すると彼は、やんちゃな子供みたいな顔で笑って、
わたしの左手の小指にそっと触れ、そして消えていった。

そして、白黒だった世界がカラーに変わり、
足元の揺れも止まり、わたしの中で、何かがパチンと弾けた。 

わたしは、ハダカの心のまま人を愛することへの勇気が、
心の中に沸々とみなぎっていくのを感じて、
今まで長い間、重くガチガチにわたしを縛りつけていた、
『心の防護服』を脱ぎ捨てて、歩き出した。

風は、『希望』の香りがした。

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