Wednesday, April 16, 2008

TY Harbor Brewery

久しぶりのデートだから、待ち合わせの時間どおりに到着する予定だったのに、15分も遅れてしまった。

銀座線を新橋で降りて、駅の構内をダッシュして山手線に乗り換えて、浜松町で降りて、また駅の構内をダッシュしてモノレールに乗り換えて、走りすぎて汗だく。 せっかく巻いた髪の毛もほどけちゃって、せっかく直した化粧も溶けちゃって、せっかく着たワンピースもヨレヨレで、4月中旬のそんなに暑くない夜、私くらい汗だくになってる人は、たぶんきっといないんじゃないかな。

天王洲アイルで降りて改札に彼の姿を探したけど、見当たらなかった。 遅いから怒って帰っちゃってたりして。 そんな不安な気持ちで電話すると、 「おつかれさまです」 といつもどおりの優しい声。  「交番側に渡って、高速道路の下、東京タワーに向かってきてね」 そういって電話を切った後、ホっと一息つく間もなく、私はまたもや猛ダッシュ。 エスカレーターを駆け下り、階段を駆け下り、地上階へ。

もう近くまで来ているだろうと、交差点を渡るときみたいに右向いて左向いてまた右向いて探したけど、彼らしき姿は見当たらない。 間違った方向へ行っちゃって、迷っちゃってるんじゃないかな、と不安になり始めた頃、 30メートル先に彼の姿を発見。 近づいて開口一番 「あれーいつもと雰囲気違うから分からなかったよ」 とニコニコする彼に、ありがとうって言えば可愛いのに、「えー?いつもスッピンでパジャマだから?」なんて言って照れちゃう私はまだまだ修行がたりないな。

ちょっとだけビルの谷間を歩いてショートカット、川沿いのボードウォークを歩く。 「今日のデートプランはお任せしてもいいかな?」という彼のため、 私の友達がGMをしている、私がとても好きなレストランの、私がとても気に入っているテラス席を予約した。

このレストランは、NYから帰国したばかりで、日本に順応できずに参っていた頃、先に帰国したBFが連れてきてくれたところ。 あの頃はまだ、友達はGMをしていなかったけれど、私たちはいつもテラス席に案内された。 都内にはなんであんなに下品な看板やネオンが溢れてるんだとか、なんで老若男女みんな髪を明るい色に染めているんだとか、なんで気の利いた会話のできるウェイター・ウェイトレスがいないんだとか、ニューヨークと東京を比較して、東京の文句ばかり並べて、カリフォルニアワインを飲みながら、NYの回想話に耽った。 

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ねぇ、あの8か9アヴェニューにあった、古い図書室みたいなラウンジがあったあのホテル、なんていう名前だったっけ? ロングアイランドの野外コンサートで聞いたレイチャールズは良かった、夕方、芝生の上でモッツァレラサンドを食べながらワイン飲んで、BGMがレイチャールズで、あれで無料だったもんな。 エルサレムから電話してきてくれたでしょう? あのとき私はキッチンの窓から月を眺めていて、あなたも遠い異国の地のホテルの窓から同じ月を眺めていたんだよね。 パークアヴェニューのデイザイナーズホテル、タダだったよな、信じられないな、なんかああいう不思議なことがたくさんあったよな、お前といると。 ヴァレンタインにあなたがくれた4つの「心」のプレゼント、感動したなぁ、でもいつもあんなことしてるんじゃないかって心配になっちゃったけど。 ニュージャージーの浜辺を歩いてるときにデートに誘おうと思って電話したのに、あれお前の番号じゃなかったよな、他のやつの番号を渡すなんて、ヒドイ女だと思ったよ。 初めてのデートであのイタリアンを選択したのは正しいと思ったけど、その後アルゴンキンに連れ込むのは、よく考えればヒドイくない? ダイアナが死んだ日のことは一生忘れないな、あのフィラデルフィアのフォーシーズンズもね。 そういえばコロラドにも旅行したよな、お前は朝まで飲んでたからシカゴで乗り換えのあたりで顔が真っ青になって、デンバーについてからも結局どこへもいけなかった。 パラマウントのキッズルームにあったトゥイーティーの椅子、あれは狂ってるよね。 
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かすかに漂う潮の香りでハっとして意識を戻すと、横には年下の彼。 その顔をみた瞬間、しみじみ思った。 やっぱりこの子ほど可愛い子はいないよなぁ、東京だけじゃなくてニューヨーク中探しても絶対いないよなぁ、ホントにキレイだよなぁ。 ボードウォークの終点、「へーここ何?」という彼の問いにはあえて答えず、彼の2歩先を歩いてお店のエントランスをくぐる。 お店、気に入ってくれるかしら、お料理、口に合うかしら、テラス席、感激してくれるかしら、私のこと、もっと好きになってくれるかしら。 緊張と期待と不安でドキドキしながら、レセプションへ向かった。

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