Sunday, April 06, 2008

Casita I

それは、「え? カシータ行ったことないの?」 から始まった。 それから1週間後、私はカシータで、この店がなぜ「愛と感動のレストラン」と言われるのかを存分に体感していた。 まるで大玉の打ち上げ花火のようなサプライズの連続は、お店の入っているビルの前に立った瞬間から始まった。

その日は18時に表参道で待ち合わせ。 私たちにとっては思い出の場所、初めてのデートの時に待ち合わせしたところ。 いつも必ず10分から15分遅れて登場する私を予測して、お店の予約は18時半だというのに、彼は30分ものクッション・タイムをもうけていた。 しかしその日は彼の読みは見事にハズレて、私は10分も早く到着。 18時シャープに現れた彼は、予約時間までどうやって過ごそうかと数十秒考えた後、周辺のお店探索に行こうと言った。 外はまだかなり明るかった。 私たちは、今までそんなに小さな歩幅で歩いたことはないくらい、そんなにノロノロした速度で歩いたことはないくらい、ゆっくりゆっくり歩いた。 大通りから少し入ったその小道にはサクラの大木があった。 風に誘われはらはらと散るサクラの花びらを全身に浴びながら、まるで結婚式のライスシャワーみたいだなぁと幸せな妄想をしながら、私は彼の15cm隣を歩いた。

飽きっぽいところは私たちの共通点で、10分も歩いたら探索に飽きてしまった。 じゃあもういっか。 お店 いっちゃおうか。 お店の入っているビルの前に到着したのは18時15分。 まだ15分もあるけど大丈夫かな。 あらウェイティング用のラウンジとかきっとあるから大丈夫よ。 そういいながらお店の案内板を眺めていたら、「どちらのお店をお探しですか?」 と若い男の子が声をかけてきた。 「カシータです」 と彼が答えると、その男の子は 「お待ちしていました。お荷物お持ちします」  と言った。 彼が 「いや、そんな、いいですよ」 と言うと、「カバンを持って逃げたりしませんから」 とその男の子は笑顔で言って、それがアイス・ブレーカーとなり、初めて訪れるお店を前に少々緊張している私たちを和ませた。 男の子は、ホテルでチェックインを済ませた後、部屋まで案内してくれるスタッフのように、私たちのカバンを持って、私たちに対して若干斜めに体を向けながら、私たちの数歩先を歩いて、エレベーターに誘導した。 

エレーベーターを降り、お店のエントランスに立つと、南国のお香が漂っていた。 ウェイティングのラウンジに着くまでの数秒間、一体何人のスタッフとすれ違い、そのたびに 「いらっしゃいませ」 と言われただろう。 全員、満面の笑顔。 彼らの 「いらっしゃいませ」 には、私たちに対する愛情が溢れていて、まるでこの店にはずっと昔から通っているような錯覚に陥った。 

テラスがキレイに見えるその椅子に腰掛けた直後、若くて可愛い男の子がシャンパンボトルを持って登場した。 そのラベルには私の名前が・・・。 コテコテの演出に弱い私は照れてしまって、フランス人と結婚したらこんな名前になるんだねなんて思わず茶化してしまった。 シャンパンの抜栓をしましょうとその男の子に言われるがまま、テラスへ。 どうやら牛刀のようなナイフでシャンパンの口を切り落とすセレモニーらしく、一回でできたら願いが叶うとのこと。  そのhow toについてのレクチャーをうけ、キルビルみたいな男前なサングラスと手袋をして、シャンパンの空き瓶で、何度も何度も練習をさせられた。 私は別に抜栓のセレモニーなんていいから、早く座ってシャンパンを飲みたいのよ。 そういう邪心のせいか、本番ではなかなかコルクが抜けなくて、これはまずいと思っただろうその男の子は、じゃあサポートしますね、と言って私の背後に回り、ゴルフのコーチみたいに私を抱え込み、勢い良くナイフを降り抜いた。 



To be continued....

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