Sunday, May 17, 2009

光の射す方へ



トモダチが暗い顔で言った。

「今までの人生で一度も、偉くなりたいとか金持ちになりたいとか思ったことなくて、そういうガツガツしてるやつらを横目に、そういうやつらよりもひいきされていい思いしてる自分をかなり格好いいって思ってきたのに、なのに、組み込まれた出世ゲームの中、別に期待してたわけじゃないのに、別に来年でも再来年でもいいのに、いや定年までこのままでも全然かまわないのに、でも今年、昇進できないかったことにイライラしてる自分に驚いて、それがものすごくイヤな気分で、なんでだか分からなくて、 その理由を解き明かしたくて・・・」。

日本の街にあるクモの巣みたいな電線のせいだよ。 パンツが見えちゃいそうなスカートをはいてるきれいな女のコたちのカラダがぴったりくっついちゃう満員電車のせいだよ。 下品なネオンのせいだよ。 最近のおかしな天気、きっと低気圧のせいだよ。 

おいしい思いをした時代を思い出して酔いしれればいいんだよ。 Youtubeで好きな曲でも聴きながらさ。 でも、気をつけなくちゃいけないのは、「他人はこんないい思いしてないよな」って思ったとたんに、 プラス・マイナスはゼロになっちゃって、また変な感じになるから、だから、ただただ純粋に、「オレはなんてラッキーなんだ」って思って感謝したらいいんだよ。 ジャージー・ショアの白い砂浜に立って、青い空と青い海を見つめながら、潮風をカラダ全体で受けながら、ああ、幸せだなって思って、この幸せを誰かに伝えたいなって思って、それでわたしに電話したことを思い出したらいいんだよ。

「ああ、いつも助けられるね。 ありがとう」

それはお互いさま。 わたしだって、ずいぶん助けられた。 いつも奪うだけで生きてきたら、今のわたしたちは今の場所にはいないはずで、わたしたちはいつも誰かに心を尽くして、いつもまわりに愛を振りまいて、だからこうして、長年積み立てた定期貯金をちょっとずつ崩す老人みたいに、ちょっとだけ高揚するような時間を過ごすことができるんだよ。

たまに会って、自分たちの立ち位置を確認しあって、お互いにあまり生意気になりすぎないように注意しあって、そうやって微調整していけばいいんだよ。 だって、流されるし、巻き込まれるし、それは避けられないことで、だから、Remember who you are!  

「そういうことでいいんじゃないの?」

わたしがそういうと、トモダチは、あのコロ、ふたりが恋人同士だったコロみたいに笑った。

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