Thursday, April 09, 2009

Five To Six O'clock On Saturday, April 4, 2009

















「(夕食は)部屋だよ」って彼が言うから、「じゃー、女体盛りだね」ってわたしが言って、彼が一瞬ひるんだところで、わたしが続けた。 「大島渚の映画で『愛のコリーダ』であったでしょう? あれ、やっちゃう?」 すると彼はまじめな顔で、「でも、刺身は、(体温で)不味くなっちゃうよ」って言って、 「うん、分かってる。 だけどさぁ・・・」ってわたしは、盛り上がる気持ちを抑えきれない。

もちろん、冷たいものは冷たいままで、温かいものは温かいままで、そうやって食べるのが基本だって分かってるけどさ、ちょっと言ってみただけじゃん。 だって、温泉旅館だよ。 熱海だよ。 不倫カップルのメッカだよ。 ものすごく淫靡な香りがするじゃん。 

すると彼が、「淫靡バビブンボね」って言って、意味不明なんだけど、なんだか妙に面白くなっちゃって、ふたりで大笑いした。 (こうやって活字にしたらあまり面白くない・・・きっとふたりともテンションがあがってたんだろうな・・・)

「じゃー、ご飯の前に温泉ね」って彼が言って、わたしたちは、お互いのカラダを見ないように&見られないようにして、部屋の端と端に離れて、着ていた服を脱ぎ浴衣に着替えた。 服を脱ぐときはいつも、ふたりとも酔っ払ってるから、しらふで裸になるのは、なんだか妙に照れてしまう。 

おそろいの浴衣をきてわたしたちは廊下を歩いた。 「ねー、家族風呂に行こうよ」ってわたしは何度も提案。 それを彼はあっさりと却下。 「じゃー、20~30分後にここで待ち合わせね」って言って男湯へと消えていってしまった。 ふたりで別々の温泉に入るってことが、わたしには耐えられない。 せっかく一緒にいられる時間なのに、離れ離れで時間を過ごすっていったいどういうこと?? ヒーヒー泣いてる心臓を押さえながらわたしは、女湯へと向かった。 

脱衣所でいざ裸になろうとしたところで、思わず躊躇。 わたしの体には、世間的にタブーとされるものがいろいろある。 おばあちゃんたち、おかあさんたち、学生さんたち、幼い子供たち、小さな赤ちゃんたち・・・みんながほのぼのとした雰囲気を作り出すその空間の中でわたしはとても居心地が悪くて、落ち着いて温泉を満喫することもできなくて、ものの15分くらいで彼との待ち合わせの場所へ戻ってきてしまった。 

数十分後、彼がエレベーターから降りてきた。 「あ、お人形だー」っていいながら駆け寄り抱きつくと、彼はいつもどおり、「おいおい」っていう恥ずかしそうな、ちょっと困ったような顔をした。 

部屋に戻るとすでに食事の用意がされていた。 えーこんなにたくさん! きゃーすごーい! 全部食べられるかなー? わたしが、「お人形が(ホワイトデーに)くれたシャンパン持ってきたからね」っていうと、「さばけるねー」って彼。  豪華な食事を目の前にしてわたしは超・ハイテンション。 「盆暮れ正月と誕生日が一緒にきちゃったよー。 もういつ死んでもいいなー」 


わたしは、その夜、その台詞を100回くらい繰り返した。 そのたびに彼は、ものすごく面白い話を聞いたときみたいに笑って、その笑顔を見たらわたしも、ものすごく嬉しくなって、毎回、彼と一緒になって、ケラケラ笑った。

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