Wednesday, July 30, 2008

『初・温泉旅館お泊り』の巻 その弐

朝食の後、浴衣のすそがはだけないように気にしながら、歩幅を狭くしてあなたの後ろを歩いた。 「小鳥みたいについていってるの」って私が言うとあなたは、「オレについてくれば大丈夫だよ」って言った。 きっとテキトーに言ったに違いないけど、私の頭の中には、ふたりの未来図がボワンって浮かんできちゃって、朝からドーンと感動。 それを悟られないように、顎が震えるくらいの多幸感を抑えながら、静かに、「うん」って頷いた。

部屋に戻った後は、しばし食後の休憩。 「食べた後、すぐ横になったら『牛』になるよ」って、よく母が言ってたことを思い出す。 あー、『牛』で結構! もうすでに、いつも、「もー もー」言ってますから!! 目を閉じて、これから始まる1日の予定を考えているだろうあなたは、まるでお祈りをしてる修道士のよう。 気軽に声をかけられない私は、あなたの左腕をそっと抱きしめ、呼吸に意識を集中しながら、あなたの『祈り』が終わるのを待った。

「じゃーそろそろ帰る準備しよっか」ってあなたが現世に戻ってきたような顔で言った。 私は、またもや、お約束どおりに、「いやーん」って言って、それを聞いたあなたは、「えっとー」って困惑したような声を出した。 混沌とした空気は私たちには似合わない。 よし!と思いついて、あなたに掛け布団をバサっとかける私。 「お人形はずっとこのままここにいてね」って私がいうと、「仕事に行くんじゃないし。 これからまだ一緒にいられるんだし。」ってあなたは言って、そして、相変わらずの、おびえたような顔になった。 これって、お決まりだけど、面白いシナリオだわ。 


私が化粧をしてると、あなたは、「いい?」って言いながら、洗面所に入ってきて、私が、「どうぞ」っていうと、あなたは歯磨きを始めた。 もちろん、それを放っておくわけもない私は、あなたの背中に寄り添いながら、マスカラをつけ始めた。 あなたは、「目に入ったら危ないだろ」って冷や冷や顔。 私は、「大丈夫よ」って言いながら、あなたの背中に、さらに強くカラダを押し付けた。 だって、一緒にいられる時間の1分1秒も無駄にしたくないんだもの。 分かってるくせに。 


帰りの車の中、家に近づくごとに口数が少なくなる私。 スーパーポジティブな私が唯一ネガティブになるのはいつも、あなたと離れ離れになっちゃう瞬間。 もちろんすぐ会える(だろう)けど、寂しくて、寂しくて・・・。 「もー もー」って、また『牛』登場。

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