Thursday, May 08, 2008

Tonight's Song - Stories by TUBE
(あのころTがいつも歌っていた曲)



1年ぶりに中学生の頃からの友達Kと飲んだ。 昔から私たちは、浮ついた言葉でお互いを励ましあったりはしないけど、お互いのターニングポイントとなるところでは、励ましの言葉を心の中で送りあう。

2001年に一時帰国して、その瞬間から再渡米に向けて準備をした。 昼夜働き、短大の授業料ととりあえず1年は食べていけるだけの生活費を稼いだ。 そして2003年、両親からの経済的・精神的なサポートが得られないまま再度渡米を強行した私。 旅立つ前にKは、14歳まで生活していた香港の思い出を絵にしてプレゼントしてくれた。 額に入ったその絵を裏返すと、Kの言霊のこもった「頑張れ」という文字。 成田からロスまでの8時間強の旅、私の涙が止まることはなかった。 

2003年から2005年までの夏休み+冬休みは必ず帰国し、そのたびに昼夜働いて、授業料+生活費を稼ぎ、なんとか自力で短大を卒業した。 NYUに編入するとき、私大にかかる莫大な授業料+東京以上に高い生活費はとても私にはやりきれなくて、恥を忍んで両親にサポートを依頼した。 短大を卒業したというクレジットがあったため、両親はそのリクエストを快諾し、1年間に2千万くらいのお金を送金する約束をしてくれた。 しかしNYでの生活が始まると、誘惑に弱い私はあっという間に堕落していき、1年で両親からの送金も止まり、気がつけば日本人駐在員たちが通うピアノバーのホステスと成り下がり、日本人社会にどっぷりつかった生活を送ることとなった。 未来が見えなくて、何で渡米したのかも分からなくなって、不安で不安で仕方ない夜を過ごしていた時、私はKに何通も何通もその時々の心境をつづった手紙を送った。 その数は全部で56通。 その全てをKは今も大切に持っているという。

帰国から2年後の2001年、Kの大親友そして私の始めてのBF・Tが死んだとき、私たちは数年ぶりに、Tの葬儀会場で顔をあわせた。 Tの棺を抱えるKの顔を見たとき、その棺を遠くから見送る私の顔を見たとき、私たちはお互いの悲しみを静かに共有しあった。 Kも私もその泪は真っ赤だったけど、涙を流すことはなかった。 というより、私たちが号泣することがあってはならないという、強い意志がそこにはあって、私たちは視線が交差した瞬間に、お互いの下したその決定は正しいものなんだと確認しあい、そして尊重しあった。

あれから、Kとは何度も会う機会があったけれど、Tの死について語ったことは一度もない。 会うときに話すのは、Tを含む中学校時代からの友達との懐かしい思い出。 阿字ヶ浦、良かったよね。 飲んでばかりでちっとも泳がなかったけどね。 阿字ヶ浦あたりは水温が低いから、砂浜で飲んでるだけのほうがいいんだよ。 毎晩毎晩、飲みに行ったよね。 なんであんなに無理してあの時期にみんなで集まったのか、思い出を作ろうと必死になっていたのか、それが今は分かる。 あれはやっぱり偶然じゃなくて、迫りくる悲しい出来事に対する必然の選択だったんだ、と思う。

今月末、Tの命日がまたやってくる。 あれから、あの悪夢のような瞬間から、7年という年月がたち、いいのか悪いのか、今の私はTを思い出して泣く夜はない。 それは自然なことなんだと思う反面、寂しいような、なんだか悪いことのような気がしてもいる私の思いも、Kはしっかり分かっていてくれている。 

わたしたちはいろいろなことを経験し大人になった。 中学生の頃も、高校生の頃も、大学生の頃も、社会人なりたての頃も、いつの時代も、生意気な私たちは自分たちはものすごく大人だと思っていたけど、振り返ればあの頃の私たちはかなり子供だった。 そういうことを、暗黙の中で了解しあうことができる、そんなKとの関係を私はとても大切に思う。

友達と彼氏とどっちが大事? と聞かれたら、私は迷いなく友達と答える。 彼氏はカム&ゴー、でも友達はどんな時代もつかず離れずいてくれる。 そんな当たり前のことがわからない彼氏なら、私はいらない。 友達とは違うレベルで愛している、その気持ちを汲んでくれない彼氏なら、私は、ホントに、いらない。 そんな比較できないことを比較しようとするような彼氏なら、私はこれから先ずっと一緒にいることなんてできないし、一緒にいたいとは思わない日がきっと必ずくる、と思う。 

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私は39歳だけど、あなたが思うより実はずっと大人で、矛盾してるようだけど、でも、あなたが思うよりずっと情けないくらい子供。 そんな私の全てを、歴史のないあなたに瞬時に分かってもらえるとは思わないけど、でもこれからもっともっと心を尽くして、できるだけ言葉も尽くして、分かってもらえるように努力するから、いつの日か、「うん、分かるよ」って思ってもらえるといいな。 だってこんなに痛いくらい好きなんだし、私がこれから並んで歩いていきたい相手は、間違えなく、あなたなんだもの。

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