Sunday, July 08, 2007

ニッポンの母

いつからだろう。 子供連れのお母さんを見ると嫌気がさすようになったのは。 隣に座った子供の肘鉄がわき腹にモロに入ったというのに、知らん顔をしている母親のせい? ベビーカーをぶつけたのを気づいたくせに、何も言わずに立ち去った母親のせい? お店の中でかけっこをして周囲に迷惑をかけている子供を注意もせず、自分の買い物に熱中している母親のせい? 以前は一緒に遊び歩いていたのに、出産を境に、子供がいない私をまるで異星人でも見るような目で見る母親のせい? 子供がいることが免罪符にでもなると勘違いして、社会に恥を撒き散らしている母親のせい?

ナイキショップに、小学生未満の男の子と女の子を連れた20代前半くらいの元ヤみたいなルックスのお母さんが、いた。 私と同じ、23.5以上24.0未満のサイズの靴を探していた。 女の子はお母さんの横で静かにしていたが、男の子はお母さんの周りを走り回っていた。 2人とも、車輪がついた浮き輪みたいなおもちゃを持っていて、まるでペットを散歩させるみたいに、紐を引っ張りながら、おもちゃを転がしていた。 一瞬、お母さんの意識が男の子から離れたとき、男の子の転がしていたクワガタのかたちをした浮き輪おもちゃが私の左足首に激突した。 激突したといっても、浮き輪なだけに、バウンスして、痛みは一切なかったが、それをみたお母さんが大声で男の子を叱咤し始めた。 「あんた、何やってんの。 謝りなさい」 男の子はべそをかき始めたが、なかなか「ごめんなさい」が出てこない。お母さんは叱り続ける。 見かねた私が思わず、「あの、クワガタ、大丈夫ですか?」 とお母さんに言うと、お母さんは、「クワガタは壊れてもいいんです。 でも人は壊れたらダメだから」 と言って、男の子を叱った。それはまさに古きよきニッポンの母の姿そのものだった。

私の中で、何かが変わっていくのを感じた。それは不思議な感覚で、今まで抱いていたその他大勢のお母さんたちに対する嫌悪感が、ス~っと消えていく感じ。 かなり大げさだけど、イエス・キリストの死によって私たち全ての人の罪が贖われたような・・・。 このお母さん1人の善行により、その他全てのお母さんたちの悪行を許そう、と思った。 そして、私の中で、遠い昔に思い描いて諦めた「母親になる」という夢が、ポっと生まれた音が聞こえた。 

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