Monday, August 25, 2008

不一致

「お土産はNINE WESTの靴がいいな。 でも布の靴は買ってこないでね。 痛いから。 皮にしてね。」 

南の島へバカンスに出かける彼に、そうお願いした。 別に靴が欲しかったわけじゃない。 お土産を買わなくちゃと、私のことを海外でも思い出してほしかっただけ。 


1週間後、帰国した彼は、シューズボックスを抱えて、得意気な顔で、ドアの前に立っていた。 ありがとう。 満面の笑顔で箱をあけるとの中には、布の靴。 一瞬、落胆した私の気持ちを上げたのは、シルエットと色がきれいなサンダルと、彼のご褒美をおねだりするような誇らしげな表情と、彼に久しぶりに会えた嬉しさ。 布の靴だっていいじゃない。 そんなことはどうでもいいような気になって、彼をハグした。
 
彼と別れてそろそろ1年がたつ今日まで、その靴を履くことはなかった。 なのに、なぜか、ふと思いついて、今朝はそれを履いてでかけた。 足を差し入れた瞬間に、よろめいたような気がしたけど、気のせいと言い聞かせて、ドアをしめた。 


駅までの道のり、一歩一歩、足に食い込んでいくストラップ。 大地を踏みしめるたびに、この靴を履いてしまったことがいかに失敗だったかを思い知らされる。 と同時に、そんなダメな選択をした自分を嫌悪する。

朝に感じた違和感は、時間がたつごとに大きな痛みに変わる。 夕方には足がむくんだせいか、ストラップはシャープなスライサーのように、足をもぎ取るような勢いで、ギシギシと食い込んでくる。 帰り道、私の中では、靴を脱ぎ捨てて、裸足で歩いて帰りたいと思うココロと、常識人としてここは我慢すべきだと思うココロが、激しい決戦を繰り広げてた。 

部屋に着いた瞬間、戦いの決着がついた。 許容を超えて異物をカラダに入れたとき、それを吐き出すことができるのは体力。 そんな感覚で、胃の奥のほうからこみ上げる怒りと一緒に、ののしりの言葉を吐いて、その勢いのまま、靴をごみ袋に投げ込んだ。 


そして、彼を思い浮かべて思った。  彼とは、性格の不一致なんて簡単な理由で別れたんじゃなかった。 全てが合わなかったんだ。 

カラダの奥のほうから、そう叫ぶ声を聞きながら、今の自分に問いかける。 大丈夫なの? 無理はしてないの? 合わせて笑ってないの? ホントに好きなの? このままでいいの?

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