Wednesday, September 20, 2006

United 93



『ユナイテッド93』は、最初から最後まで緊張の糸が解けない。 肩に、両腕に、足に、顎に力が入ったまま緩まない。 まるでドキュメンタリー・フィルムを観ているようだった。

2001年9月11日朝。
4機のアメリカ航空機がハイジャックされ、3機は次々と標的に到達したが、4機目はターゲット目前に墜落した。 4機目に乗っていたハイジャッカー4人が目的を果たせなかった理由は、彼らが人間らしさ、そして、乗員乗客44人の希望と勇気にあった。

最初の映像は、ハイジャッカー4名が隠れ家で身支度を整えている姿だった。どこにでもありそうな普通のつくりの部屋で、どこにでもいそうな普通の20代の若者たち。パッキングをし、ひげや体毛を剃り、神に祈りを捧げる。これからあんな大惨事を起こそうとしている人間とはとても思えないその姿にショックを受けた。

NJ・ニューアーク空港でスクリーニングを潜りぬけ、搭乗までの時間をゲートロビーで待つ4人。彼らの周りでは日常のシーンが広がっている。これから出張に向かうもの、家族・友人を訪問するもの、その他さまざまな理由でニューアークからサンフランシスコに向かう老若男女。誰もが当たり前の数時間の快適な空の旅を信じていた。誰もが安全かつ時間どおりにサンフランシスコに到着できることを疑っていなかった。携帯電話の電源を切る前に電話をかけるもの。"I'll call you when I get there" 再び電源を入れることができるのはサンフランシスコに到着してから。あちこちから聞こえるのは、「着いたら電話するよ」という声。その中に一言だけ静かに "I love you" とつぶやくものがいた。そしてその彼こそが、これからハイジャッカー4人組みの1人。機長・副機長を殺した後、操縦桿を握ることになった彼だった。

悪夢のようなあの日が、実際の映像を交えて、映し出されていく。アメリカン航空11便がレーダーから消えた瞬間から、ユナイテッド93便がペンシルバニア上空から急降下をしていく瞬間まで。地上でどんなことが起こっていたか、機内ではどんなことが起こっていたか。地上、機内、そのほか関わったすべての人々の思考、感情が画面から迫ってくる。

ユナイテッド93便が地上に叩きつけられ、乗員乗客が即死する数秒前のところで、映像が終わる。そして、政府高官たちの対応の遅さと、その後の出来事を伝える文章が流れる。それを読んだ途端、抑えきれない強い感情が込み上げ、涙となってあふれ出す。




1機目:7時59分、アメリカン航空11便、ボストンからロサンゼルスに向け離陸。
8時46分、ニューヨーク・ワールドトレードセンター・ノースタワーに激突。
乗員乗客92人全員死亡。

2機目:8時14分、ユナイテッド175便、ボストンからロサンゼルスに向け離陸。
9時3分、ニューヨーク・ワールドトレードセンター・サウスタワーに激突。
乗員乗客65人全員死亡。

3機目:8時30分、アメリカン航空77便、ワシントンからロサンゼルスに向け離陸。
9時37分、ペンタゴンに激突。
乗員乗客64人全員死亡。

4機目:8時42分、ユナイテッド93便、ニューアークからサンフランシスコに向け離陸。
10時3分、ペンシルバニア州・シャンクスヴィルに墜落。
乗員乗客44名全員死亡。

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