Wednesday, August 30, 2006

命の火

おばあちゃんの容態は毎日確実に悪くなっていっている、と母が言った。

とうとう今日からモルヒネを入れ始めた。
利尿剤ももうあまり効かなくなり、むくみがひどい。
持参したパジャマのウエストのゴムがきついので、
病院の寝巻きを借りて着ている。

おばあちゃんは週末まではもたないだろう、と母が言った。

おばあちゃんの命の火が消えかかっているというのに、
私たちの生活は普通に続いていく。
今すぐ飛んでいきたいと焦る反面、今すぐ飛んでいっても何もできない空しさ。
私たちがが笑っていようと泣いていようと、目の前の現状は変わりはしない。
私たちがどんなに祈っても、おばあちゃんの命の火がその勢いを取り戻し、
再び燃えあがることはない。
おばあちゃんの命の火が今消えようとしているというのに、
私たちはただ黙って見ていることしかできないだなんて!

昨日と同じ歩幅で歩いていく私たちの中で、
おばあちゃんだけが急激にペースダウンしていく。
みるみるうちに、その姿が遠く、小さくなっていく。
その小さな影は点になり、薄くなっていく。
そしてとうとう消えてゆく、永遠の彼方へと。

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