Wednesday, August 09, 2006

Beauty (& the Beast)

彼女は、首輪をして、キャミソールを着ていた。
「それ衣装?」と聞くと、「自分で買いましたぁ」、という。
私:「誰かと待ち合わせしてるの?」
彼女:「知り合いがそろそろくるはずなんですけどぉ・・・」
そのまま浮遊させているわけにもいかないという想いに駆られ、
その手をつかみ、無理やり隣に座らせる。

しばらく話していると彼女は、「私いくつに見えますぅ?」と聞いてきた。
舌足らずな話し方、肌のはり、歯並びのよさ、を見て私は、
「え~、若いよね?21歳くらいかな?」と返した。
すると彼女は、「31歳なんですぅ・・・」と恥ずかしそうに言った。
「え~、見えないよね!マジで?だって肌きれいじゃん」と私は、
周囲の男たちに同調を求めた。
「見えないよねぇ!」「若いよねぇ」を連発する男たち。
こいつら使えねぇと思ってしまう、だめな男たちばかりに囲まれている。

彼女の両腕には、たくさんの、数え切れないくらい、リストカットの後がある。
手の甲には、たくさんの、根性焼きの後がある。
「こんなに綺麗な肌してるのに、どうして、こんなことするの?」という私の問いに
彼女は、何も答えなかった。

彼女は、眠りたくない、と言う。
眠くならないように、カフェイン含有量の高いドリンクをとり、
眠気を誘うアルコール飲料は一切とらない。
彼女は、知り合いをみつけては、席を移動し、
ちょこん、とおまけのように、その横に座る。
知り合いが移動してしまえば、また、新しい知り合いを探し、
その横に座る。

私が彼女の動きを目で追っている途中に、60歳近い男性が
「一緒に飲みませんか?」と声をかける。
と同時に、40歳の男が横に座り、微笑みかけ、
たわいのない話を始めようとする。

全てがスローモーションで動いていく。
冷静なのは、私の思考だけだ。
たくさんの人がしきりに話しかけてくるが、
その言葉の全てが陳腐で、相手にする気が起こらない。

その空間の中、彼女を探す。
相変わらず、定まらない視線のまま、ゆらゆらと
人と人の間を泳いでいる。
その彼女に近づき、頬に柔らかくキスをした。
「こんな綺麗な体、大事にしなくちゃだめよ」
両頬にキスをして、彼女をぎゅっと抱きしめ、
その空間を後にした。

彼女は今頃何をしているだろう?
今夜もまた、あの空間で、泳いでいるだろうか?
それとも、自分の美しさに気づき、今頃誰か愛する人の腕の中で
想いを募らせているだろうか?

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