Today's Song - Koko by Ryuichi Sakamoto



流行の服を着て、流行の髪形にして、
流行の香りをつけて、流行の化粧をして、
流行の映画をみたり、流行の本を読んだり、
流行の土地へ旅してみたり、
流行のグッズを集めてみたり、
流行のシェフの作るお料理を食べて、
流行のソムリエの薦めるワインを飲んで、
流行の音楽をカラオケで歌って、
流行の曲にあわせてダンスを踊って、
流行の建築家の作ったホテルに泊まって、
流行のプロデューサーの作った番組を見て、
流行のアイドルに熱狂して、
流行の政党に未来を託して、

あちこちそちこち、探しながら、
歩き続けてみたけど、結局、
歩き疲れた足の痛みが残るだけ。

好きなものって、
そうそう変わるものじゃない。

幼いころに、骨の髄まで染み込んだ、
そういうものは、ずっとずっと息づいてる。
そして、ちょっと気を抜いた瞬間、
ふつふつと、動き出す。

坂本龍一は、
わたしが、１０歳のときに、出会った音楽家。

エレクトーンを長年弾いていたわたしは、
彼の電子音にまず惹かれ、そしてその後、
彼のピアノの音に出会い、その音に、息をのんだ。
幼いころのわたしにとってそれは、
衝撃的な体感だった。

音符のひとつひとつに羽根が生えているような、
そんな音。

わたしのココロを、やわらかく、くすぐり、
わたしの細胞のひとつひとつが、心地よく、共鳴する。

きっとこれからも、ずっと。
たぶん、最後の息を吐くその瞬間まで、ずっと。