Wednesday, July 29, 2015

母と子のエピソード

母は、40代半ばから後半、息子は中学生くらいだった。

息子は、ダウン症。息子が発する言葉は3歳児のよう。

母は、トマトソースのスパゲッティを、息子はパニーニを注文した。

ランチセットの、グリーンピースの冷製スープが、運ばれてくる。

息子はものすごい勢いですすり始めた。

そんな息子に母は、「ゆっくり食べて」と優しく声をかけた。

スパゲッティとパニーニが運ばれてくる。

息子は、サイドに添えてあったピクルスも含め、あっという間にたいらげてしまった。

「あ、それ(ピクルス)、食べれたの」と、母。

息子は無言。

スパゲッティを、少しずつ少しずつ、口に運ぶ母を見つめていた。

四分の1くらいを食べると母は、息子の食べたパニーニの入っていた皿を持ち上げ、

スパゲッティの皿を息子の目の前にスライドして、「食べれる?」と聞いた。

息子はその質問に答えずに、バキュームのように大きな音をたてながら、

スパゲッティを吸い込んでいった。

そして、母は、店員に、ドリンクとチェックを持ってくるように声をかけ、

息子には、「ゆっくり食べて」と、声をかけた。

運ばれてきたオレンジジュースを、息子はズズズっと音をたてながら飲み干した。

母はアイスコーヒーに少し口をつけた後、

「さ、電車に乗って帰ろうか」と息子に言うと、

息子は、「ママー、ママ、ママー」と叫び、それがイエスの合図のように、

母と息子は席をたってレストランをあとにした。

ものの15分くらいの出来事だった。

母と子。

しっかりとした信頼関係、深い愛でつながった絆。

それに触れ、私は、まだまだなと、思いました。