Saturday, March 09, 2019

R.I.P Keith



K: 結婚パーティーにも行ったんだよね。まぁ、何というか。。当時、漠然とだけど、コイツら離婚するだろうな、キース自殺しそうだなって思ったんだよね、なぜだか。幸せの絶頂のはずなのに。 だから、何と言うか。。驚きはなかった。やっぱりなってのが正直な感想。。

A: そっか。結婚式にお呼ばれするくらいに親しかったんだね、キースさんと。ショックでしょう。 Kさんはアーティストだから繊細な感覚がある。だから自殺するような繊細な人を感じ取ることができるんだと思う。 自殺した人のそばにいた人は自責の念に苦しめられる。喪失感だけじゃなくて、自責の念がなかなか消えないのと同時に、また誰か親しい人を失うんじゃないかっていう恐怖がつきまとう。

K: キースは、当時も幸せなはずなのに、どこか心ここにあらずみたいなとこがあって。 爪を噛むんだよね。そういう時に。 結婚パーティー控えた世界的スーパースターと爪を噛む癖の違和感だよね。 あー、コイツ、子供の頃に何かあったなって。 刺青入れる客なんて、ちょっと闇を抱えているヤツ、多いから。 そういうの、直ぐに感じ取るんだよね。 そんで、コイツ、大丈夫かな?メンタル問題ありそうだなってその時思って。 凄い紳士で気さくなんだけどね、表面的には。 演技だろうな、きつそうだなって。 マリリンマンソンの話とか、エビスジーンズの営業の話とか。沢山面白い話、してくれたよ。

A: 昔読んだ本の中に「愛のタンク(貯蔵庫)」の例え話があって、なるほどなって思ったことがある。人はいくつかの愛のタンクがあって、それが満タンにならないと空虚感があって、つらいんだって。愛のタンクは親の愛、友人の愛とか色々あるんだけど、キースさんはそのタンクのどれかが満たされていなかったのかもね。 でもそのタンクは誰が埋めてもいいんだって。親の愛のタンクが足りなかったら、親みたいな人に埋めてもらえばいい。そうやって自覚することで前にすすめるみたいな話だったよ。 

K: あー、なるほどね。。オレも子供の頃、爪噛む癖があって、その原因も分かってるから。なるほどね。。 エビスの話、面白いよ。 エビスジーンズの営業が、楽屋に大量のデニム、プレゼントで持ってきたんだって。でも、キースは趣味じゃないからいらないって断って。 そしたら女の営業、このままじゃ会社に戻れないってその場で号泣したんだって。 その話聞いて、すげーな、エビスジーンズ。女の涙まで使うかって思ったんだけど、キースはその子に泣かないで、全部頂くよって。純粋な子だって(笑)。 それからエビスジーンズとの付き合いが始まって。 ウチに彫りに来た時も、その子に会いたいからエビスジーンズに連れてってくれって言われて連れて行ったよ。 まぁ、繊細。ナイーブ。

A: 繊細だし、優しい人なんだね。だったらなおさら、優しくない人がたくさんいる世界では生き辛いね。私は優しい人としかつきあわない。傷つくから、簡単に。でも若いころはそれがわからなくて、いろんな人とつきあって、すごく疲れたし、傷ついた。私もずっと爪を噛んでたんだ。血がでるくらい。でもいつの日かなおったよ。アメリカに行ってからかもしれない。 キースの気持ちがわかるのは、Kさんも同じように繊細だからだよね。もちろん経験を重ねて、甲冑をつけるようになったんだろうけどね。 甲冑をつけなかったら、傷だらけ、血だらけになっちゃう。

K:  今はフルメタルジャケット! 97年。絶頂期のワールドツアー。 ここにあるよ。 追悼でも、こういうのSNS で出しちゃうと宣伝利用みたいになっちゃうから。 そこはスルーしようと決めてる。

A: 友だちなんだね。心の友だち。 貴重だよ。そういう友だちって少ないから。 きっとキースもそう思っていたんだね。

K: 友達じゃないよ。ただの彫師と客の関係だから。

A: 彫師と客の信頼関係はものすごいものだよ。 体に傷をつける人に全身を預けるんだから。 信頼だよ。 誰でもいいわけじゃないよ。

K: 血にまみれる仕事だからね。 不思議なもんで、触るとイロイロ感じ取る。 だから、あまり驚かなかった。やっぱそうなるよなって。そんな感じ。 子供を亡くした親と子供が産まれた親が同じ日に子供の名前を彫りに来たりするんだよ。 もう、その温度差は受け止めきれないくらいで。 そんな事が年に何回もあるんだよね、この仕事。 どっちも物凄く子供を愛しているのに変わりはないのにさ。 状況は真逆だから。 なんでこんな事に巻き込まれてこんな気持ちになるんだろ?って。 よくあるよ。

A: そうだね。人の想いを感じてしまうから、大変な職業だと思います。 前世は神事に携わっていた人かもしれないね。神社仏閣って、いつもそこにあって、人を拒まないし、選ばないでしょう。Kさんの仕事もそうだよ。 

K: オレは客を選ぶよ(笑)

A: 選ぶんかい! 笑 私はグーグルという俗世間的なツールでKさんを探し出して、彫ってもらうことになったけど、初めてあった時から不思議な感じがしたよ。普通に考えたら、初めて掘るわけだし、怖いんだろうけど、すごく平安な気持ちだったよ。 

K: 選ぶよ(笑) もうトライバルや文字はNGにしたし。 気に入らない仕事は断ってるし。 手広くやってられないくらい、専門的になってきたからね。これ以上の激務は心身共に持たないから。 確かに、それだけ忙しいと仕事を選ばないとバテちゃうね。 せめてやりたいジャンル、自分が夢中になれるモノで埋めないと。 心がこわれる。

A: 彫師さんは芸術家と医者(外科医と精神科医)と宮司とスピリチュアルカウンセラーをあわせたような職業だね。 

K: 昔は文字も手書きだったけど。今はプリンターだから。 オレは機械じゃねぇ、キャノンじゃねぇって言葉がずーっと頭の中でリフレインするから。 そういうの、断らないと狂う。 そういう意味じゃ、昔のやり方の方が下手でも人間味があったんだよね。 今はパソコンで合理化されて。タトゥーもクローンになっちゃってる。 プリンターの代わりかよ!って。

A: そうだね。ここまでデジタル化が進むと思考までデジタル化しなくちゃいけないって勘違いしてしまうけど、人はもっと大きくて、解明できないものだし、もっとあたたかくて、だからこのデジタルな現代に適応できない人は病んでしまうんだろうね。

K: そうだと思うよ。 客もプリンターみたいな整然としたモノが良しとするから。 だから、そういうのを断らないと人間性が維持出来なくなってくるから。

K: それにしてもね。。 (奥さん=甲斐ちゃんは)キースを自殺するまで徹底的に追い込んだ毒婦みたいな報道もあるから。。 甲斐ちゃん、当時は英語が話せなくて。それで結婚して移住だったから。 地元のコミュニティにとけ込めてたらここまでヒドい言われ方はしないと思うんだよね。 とても気さくな奥様で、あの二人に何があったのか、ただただ残念とかさ、そんなコメントになるはずだから、普通。 キースがベタ惚れだったとは書かれてるけど、甲斐ちゃんの、良い印象の報道、全く出ないから。 たぶん、孤立してたのかな?って思うよ。

A: 夫婦のことは2人にしかわからないからね。外からどんな風に見えようと。 とにかく残念だし、周りは悲しくて悔しくてたまらないだろうな。 

K: 甲斐ちゃんがキースを自殺に追い込んだって、世界中に報道されてるから。 誰もホントの事は分からないはずなのに。 ちょっと残酷過ぎるだろって。 甲斐ちゃんが、キースの死にコメントを出さないのは不自然とか。そんな報道もあるから。 南極くらいしか、逃げ場がないよ、これじゃ。 そんで、甲斐ちゃん。DJ ネームが悪すぎるんだよね。 DJ 外道スーパーメガビッチだから。 甲斐ちゃんの事、知らない人はこの名前見たら金目当ての毒婦に引っかかったって思っちゃうから。 それでこの報道だから。

A: 自殺だけじゃなく、物事がそうなるには色々な要素があるのにね。 人間関係は相性もあるしタイミングもあるし前世や来世の縁もあるし自分たち以外の外部の人との関わりもあるし…複雑に絡み合ってるわけだから、短絡的な結論を並べても陳腐だよね。 ただキースの死にみんなショック受けていて何がなんだかわからない状態なんだろうな。混乱してるんだろうな。 そんな時、毒女がいた!ってなると、安心できるんだろうな。

K:  プロディジーは、97年に全米チャート一位。そこをピークに20年以上、ヒットが出てないんだよね。 それでもシーンのトップに君臨し続けた。 まぁ、いわゆる一発屋なんだけど。一発屋が20年以上、君臨するってさ、プロディジー以外に例がないんだよね。 でも、97年の呪縛から抜け出せなくなってて。ファンもフェスティバルオーガナイザーも求めるのは97年。 以来、20年以上、97年をやり続けバンドは存続し続けたから。 50にさしかかった田舎の静かな暮らしが好きなお人好しが、エレクトロパンクの象徴としてイカれサイコをこれからも演じ続けなきゃいけないってのは、相当キツかったと思うよ。 甲斐ちゃんが好きになったキースは、ステージのイカれサイコのキースちゃんだったからね。。 人ってさ、年齢を重ねて変わっていくもん。それが自然なのに、ファンはそれを許さなかったから。 SNS の追悼メッセージ、沢山上がってるけど、ほとんどが97年のキースだから。 ファンは求めてないモノに金は出さないからね。 残酷だよ。。イロイロ。 残酷だね。

A: 人だけじゃなく、何もかもが変わっていくのに。同じところにずっといて同じことをずっとするようにと言われてたらアタマがおかしくなってもら仕方ないし、刑務所よりも自由がないね。 

K: だよな。。ホント。 毎朝シャンプー三本飲み干すとか言われてたから(笑) ファンが求めるキース像ってそういうのだから。 97年。あの頃は世紀末で。 恐怖の大王が降ってきて世界が滅亡するとか言われてて。 そんな時にプロディジーが現れて。その強烈なビジュアルと音楽で、恐怖の大王が現れた!って世界中を虜にして。 それだけ鮮烈だったんだよね、97年のプロディジー。

A: 若い頃は大なり小なり狂気があって、年を重ねていくなか、経験を積むなか、失っていくというか…狂気を保って生きるのはキツイから、折り合いをつけていくというか、打算が働くというか、器用になるというか…大人になっていくんだろうな。 でもその若い頃の狂気を大人になった今も求められるんだとしたら…カラダが持たないよね。今、私の年齢と体力でニューヨークにいた頃みたいな生活したらたぶん1週間も持たないとと思う。 心身ともに穏やかに過ごしたいと思うし、たまに刺激(といっても深酒くらいだけど)があって、一日くらい復活に時間がかかるくらいでいいやと思う。

K: 衰えた訳じゃないと思う。 出来る事、能力が変わって行っただけで。 幅は確実に広がるからね。その分、体力に負担のない出来る事も増えるから。 それが経営とかだったりするからね。

A: そうそう。賢くなったというか。ドラクエみたいなもの。レベルがら上がっていって出来ることが増えてきて。でも経験を重ねることで失ってしまうものも残念ながらあって、それは切ないけど。とにかく変化していくものだからね。同じことを永遠にはできない。少しずつ変えていって、振り返ってみると随分変わったなってなるけど、変わっていく最中は変わっていくことにも気がつかないものだよね。 それが出来なかったから。プロディジーは。 残念だね。もったいない。生きてるって、かなり素晴らしいことだから。 

K: キースも97年以外に輝ける場所を見つけられなかったからね。 チャレンジはしてたんだけどね。フリントってソロ名義で活動したりレーベル立ち上げたり。 ことごとく失敗してたから。 ファンが求めるのはプロディジーのキースで。フリントじゃなかったから。

A: 止まっている人やものからしたら恒常性が重要で、変化は怖いものなんだと思う。だから変わらないキースを求めたんだろうな。 

K: そうなんだろうね。いつまでも輝けるあの頃が見たいって。 キースは..音楽の事を全く知らなくて。それはオレもビックリしたんだけど。 元々ダンサーとしてバンドに加入したんだよね。だから無理もないんだけど。 それがエレクトロパンクバンドの象徴に祭り上げられて。 ダンサーとして加入したバンドでたまたま歌ってみたらメガヒットだから。 他に移る事も出来なくなってたから。 窮屈だったと思うよ。 97年。グループ絶頂期に買ったエセックスのファームハウス。 そこののんびりした暮らしこそが成功の証で、全ての思い出が詰まったパラダイスだったんだろうね。。 キースの代表曲にファイヤースターターって曲があって。この曲でバンドの地位を不動にしたんだけど。 キースの背中に不動明王彫って。 不動明王の後背の火炎に色を入れてたらさ、スタジオ焦げくさいんだよ。 あれ?なにこれ??妄想? って。 そしたら消防車10台くらい集まってきてさ。 スタジオの三軒隣のガソリンスタンドの隣の家が火事で全焼(笑) スゲーな!お前、ホントにファイヤースターターだな!って(笑) やっぱ、世界中を虜にするカリスマはこんな事が起きるんだなって。 不思議な良い思い出だよ。

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