M男
「高低の激しい生活が好きなんだ」って、
友達に、そう言葉にしたとたん、なんかが弾けた。
真冬のイーストリバーに飛び込んだMの話。
彼は既婚、41歳だった。
朝方まで一緒に飲んでいたロシア人の女の子に、
「飛び込んだら、させてくれる?」ってバカみたいなお願いをして。
で、ホントに飛び込んだら、思いっきり流されて、
やっとのことで、排水溝につかまって、
その中にもぐりこんで、救助隊が助けにきてくれるのを待ってた。
もちろんそのコロには、ロシア人の女の子は逃げちゃって、
結局、させてもらえなかったんだけど。
レスキューの人たちやドクターたちには、
オマエ、頭がおかしいぞって言われて、自殺願望があるなって言われて、
数日間、精神病棟に隔離されたけど。
彼はものすごく正常で、ものすごく満足そうに笑ってたな。
Mによく言われた。
「アヤコは、壁ぎわ、ギリギリまでは行くんだよ。
でも、壁の上には上らないし、壁のテッペンから飛び降りたり、
壁の向こう側にはいかないんだよ。なんでなんだろ。」
あのコロは、「行きたくねーよ」って言って、
バカみたいなことしてるMを観て、いつも笑ってたけど、
今になって、ようやく、Mの言ってたことが、ちょっとわかる。
もっと自分の限界まで、いろんなものを脱ぎ捨てて、
今まで行ったことのないところに、行ってみたい。
そこから見える景色は、どんな感じなんだろ。
だって、今のこの、ツルツルしてる世界には、
耐えられないって、最近、思うんだもん。
もっともっともっともっともっともっともっともっと・・・。
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