Monday, March 09, 2009

ひとり

休日に外出しないと損した気分になってしまう「貧乏性」なわたしは、かねてから行ってみたかった南町田のアウトレットへ繰り出すことにした。

到着したのは16時。 日中の春のようなあたたかさはすっかり影もなく消えていて、駅に降り立った瞬間から冬の木枯しがからだ中に巻きついて離れない。

アウトレットは、手をつないだり腕をからめたりして寄り添ってあるく恋人たち、夫婦たち、子連れの家族たちで賑わっていた。  その光景をぼんやり眺めていると、急に寒気がした。 

「寒い・・・」 ぶるっと震えた瞬間、思わず小さくこぼれた。 と同時に、寒さが急激に増したように感じた。 まるでダウンジャケットに穴が開いているようだ。 冷たい風がからだの芯まで冷やしていく。 今にも、足元からパリパリと凍りつき、しだいに頭の先まですっぽりと氷で覆われてしまいそう。 

「帰ろう・・・」 買い物もしないまま、到着から30分もたたないうち、駅までの道を引き返す。 感覚を失いつつある四肢を引きずり、やっとの思いで駅にたどり着き、タイミングよく滑り込んできた電車に乗り込んだ。 

車内の暖房で、少しずつからだがあたたまっていく。 安堵しながら視線を車窓に移すとそこには、美しい夕暮れの空が広がっていた。 電車に揺られること約15分、大好きな彼の住む町が見えてくる。 やわらかい灯りのともった家々が点在している。 愛する人のためにと夕食の支度に精を出す妻たち、父の帰りを今か今かと待ちわびる子供たちの姿が浮かんでくる。

とその瞬間、アウトレットで感じたものと同じような寒気が走った。 それは、大きくて重い何かが頭の上にドーンと落ちてきたような感じのようで、太くて長い何かで胸をズブズブズブズブと刺されたような感じのようでもあり、罪悪感のような、空虚感のような、泣きたいような、怒りたいような、そのどちらでもないような、どう説明したらいいのかわからない感覚が、胸の中をグルグルと高速度で渦巻いている感じだった。

わたしを乗せた電車が最寄り駅に到着する。 すっかり暮れてしまった空の下、「ひとり、ひとり、ひとり、ひとり・・・」とつぶやきながら、待つ人のいない灯りの消えた寒くて寂しい家へ帰るわたし。

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