Saturday, July 22, 2006

My perfume collection


香水を集め始めたのは、初めて渡米した20歳のとき。
日本のデパートでは手が届かないくらいの価格で売られている高級な香水が、アメリカのモールではまあまあ手が届く価格で売られていた。日本のデパートの売り子さんたちは、小娘が素敵な香りをスニッフィングしていると怪訝そうな顔をするが、アメリカのモールのセールスパーソンたちは、誰もが好きな香りを気軽に試すことを許してくれていた。

学生だった私は両親からの送金で生活をしてた。その私が初めて購入(両親のお金で!)したのは、ChanelのCocoだった。同級生たちは柑橘系やフローラルな香りを好んでつけていたが、私はそういう香りがあまり好きではなかった。そして色々な香りをスニッフィングした中で、Cocoの香りを嗅いだとき、なぜかとても切ない気持ちになって、一瞬にして惹かれてしまった。Cocoは成熟した女性を想像させた。触りたくなるような柔らかな服を着て、素足でヒールの高いサンダルを履き、リラックスしているときの心臓の鼓動と同じくらいのスピードで歩く。風が顔にかかる髪を払い、膝丈のスカートの裾を揺らす・・・。20歳の私のクローゼットの中にはコットンの服ばかりで、ヒールの高い靴なんで1足も持っていなかった。そんな私がCocoを身に着けているのは、周囲からみたらとてもアンバランスな感じだったに違いない。私の肌の上でCocoの香りが暖められて匂い立ち、香りのオーラを作る。その中に包まれているのがとても心地よかった。

Cocoを購入してからは、様々な香水を集め始めた。人気があるとか新製品だとかいう安易な理由で購入してしまったものもあれば、悩みに悩んだ末、やっと購入を決意したものもあれば、Cocoとの出会いのように一瞬で恋に落ちてしまって購入したものもある。その中にはもちろん好き・どうでもいい・嫌いの区別が明らかにあって、嫌いだと思う香りをつけていると、頭痛がしてきたり気分が悪くなってくる。その反対に好きだと思う香りをつけていると、とてもリラックスできたりやる気が出てきたり、なんて人生は楽しいんだろうと楽観的な考えが次々に浮かんできたり、とても幸せな気分で過ごせる。ある本で読んだことだが、視覚や聴覚はいちど大脳の視覚野や聴覚野に入ってから感情を司る大脳辺縁系にはいるらしいが、嗅覚だけはダイレクトに大脳辺縁系に入るらしい。そのせいで、匂いに対する好き嫌いの反応は、見たもの・聴いたものに対するそれよりもずっと速いのだそうだ。

一番最近では、ランコムのTropiquesを、香港旅行中に購入した。甘く官能的で且つ南国の果物のような香り。その香りに包まれていると、まるで自分が美味しい食べ物にでもなってしまったかのような錯覚。香港島と九龍島を結ぶスターフェリーのデッキで、彼が私を後ろから抱きしめる。その時彼は、潮風を吸い込むふりをして、私の体臭と融合したこの魅惑的な香りに酔っているに違いない・・・。なんていう絵が浮かぶ香りだ。
さあ、この夏はどんな香水を購入しようか。新しい香りには新しい思い出ができる。楽しかった夏が終わり、メランコリックな気分になる秋がやってきたとき、しばらく「夏の香り」を着けていることにしよう。遠くへ旅立ってしまった夏の思い出が、「夏の香り」と共に一瞬戻ってくる。しかし儚い夏の思い出は、「夏の香り」が消えるのと同時にまた消えてゆく。新しく始まる秋とその香りに全てを託して・・・。

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