Wednesday, January 02, 2019

Dream Makers


それは客室からの1本の電話から始まった。

ゲストのお子様がマスコットのPに会いたいと言っているという。手元にあるスケジュールによると、マスコットのPがゲストと触れ合うイベントは昨日で終わっていた。

「申し訳ありません。昨日にてイベントは終了しております」と私の同僚はお伝えし、電話を切った。

それから数分後、同じゲストから再度入電があった。今度は私が応答した。ゲストが言うには、お子様がどうしてもマスコットのPに会いたいと。そして客室に入っていたレターには、今日から6日まで午後12時から16時までマスコットのPに会えるイベントを開催していると書いてあると。

「お調べいたしまして、お電話さしあげます」と私は応答し、電話を切った。

時計を見ると15時57分。あと3分でマスコットのPは帰ってしまう。さてどうしたものかとチーム一丸となり知恵を絞り出すこと30秒。まずはイベント実行部隊に問い合わせることにした。

「アウトソース会社の担当者Sさんの携帯に連絡してみたらどうかな。でも契約では16時までだから時間延長は難しいかもしれないよ」

すぐにアウトソース会社の担当者Sさんに電話する。

「あの・・・マスコットのPに会いたいというゲストがいまして、お子様です。こちらの情報伝達ミスで、マスコットのPに会えるのは昨日までとお伝えしてしまいまして。(Pの出番は)16時まと聞いているのですが、もしできれば、ゲストのお部屋〇〇号室までマスコットのPに行ってもらえないでしょうか。客室まで同行するスタッフを送りますので。」

しばしの沈黙のあと、担当者Sさんが言った。

「・・・わかりました。では○階の業務用エレベーター前でお待ちしています」

私は心の中で「やったー!」と叫びながら、同行するスタッフを送らなくてはと思っていいた。

客室係のコーディネーターに電話する。

「今、すべてのスタッフが出払っていて、今すぐ誰かを送ることはできないんですよね・・・誰か行ける人いません?そちらに」

振り返るとチーム全員が電話応対中。ふと上司を見ると、パソコン画面を睨んで何かと格闘はしてる様子だが、ゲスト対応ではなさそう。

「Yさん!お願いします!マスコットのPと一緒に○○号室まで行ってもらえませんか?」

上司はきょとんとした顔で、「え? あ、いいよ」と。

全ては整った。すぐにゲストに電話をする。

「○○様、先程はお問い合わせいただきありがとうございます。今からマスコットのPがお部屋に伺ってもよろしいでしょうか?」

ゲストの歓喜の声を聞き、安堵し、しずかに電話を切った。

***

今日みたいなことは特別じゃなくて、きっと世界のあちこちで起きているんだと思う。人はみんな優しくて、困っている人がいれば自然と助けたくなるものなんだと思う。一人で抱えきれなければ、周囲に声をかけ助け合って、できる限りの手を尽くすんだと思う。今日、私たちチームはゲストの夢を叶えた。きっとゲストは今日起きたことを忘れないと思う。そして機会があればきっと、誰か別の人の夢を叶えてくれると思うし、もしかしたらもうすでに誰かの夢を叶えたのかもしれないから、今日こうして夢が叶ったのかもしれないし、でもとにかく、善の連鎖は続いていくと、新年になったばかりの今日、ポジティブな想いでいっぱいの私は信じている。

私の夢を叶えてくれた人たち全て、特にBFFに、心から感謝しています。ありがとう。

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