肩越しの景色
静寂の中、彼がわたしを抱き寄せ、わたしたちの服が擦れる音が周囲に響いた。
彼の肩越しに、何千年も変わることのなかった景色が広がっている。 わたしはそれを穏やかな気持ちで眺めていた。
彼はわたしから少し離れ、そして1秒後に、小鳥のようなキスをした。
「これが、今、僕が見ていた景色」
彼はゆっくり180度転回する。 わたしたちの位置が逆転して、彼が見ていた景色をわたしが、わたしが見ていた景色を彼が見ることになった。
ああ、どうして彼って、こういう風に、いつも痒いところに手が届いちゃうんだろ。
「このままずっと時が止まってしまったらいいのに」
わたしは心のなかでそっとつぶやいた。
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