Saturday, November 05, 2011

綾鼓(あやのつづみ)


人生初・能&狂言を観てきました。

12:45 開場
13:30 狂言「栗焼」
- 休憩 -
14:15 能「綾鼓」
16:00 終演

狂言「栗焼」は、二人芝居。例えるなら漫才かしら。貰い物の栗を焼け!と言われた家臣が、栗を焼くんだけど、焼き上がった栗があまりにも美味しそうだったので、食べてはいけないと思いつつ、ひとつ口に入れたらそのあまりの美味しさに止まらなくなって、ふたつ、みっつ、よっつ・・・と40個全部の栗を食べてしまった! 家長に怒られたくない家臣は、なんと言い訳をしようと考えた末、とても良い案を考えた・・・というお話。振り付けも面白いし、テンポも速くて、所々で笑えて、まったく内容は知らなかったけど、楽しめました。

約20分の休憩の後、能「綾鼓」がスタート。

狂言とはうって変わって、大勢の演者が舞台上に登場。楽器演奏の人たちは4人。笛、太鼓が大・中・小。演奏者のお世話係が後ろにぴったりと張りついています。地謡(コーラス隊?)は8人。演者たちが所定の位置につくと、舞台の上に緊張感が張り詰め、会場もしーんと静まり返ります。そこに、物語を説明するナレーター兼脇約の人と、臣下役が登場。いよいよ始まりです。

場所は、皇居。そこに働く庭師の老人が、天皇の第三夫人に恋をして、貴族たちがこれを笑いものにするという、なんともえげつないストーリーです。

臣下が老人を呼びつけこう言います。「あの池辺の桂の木にくくりつけてある太鼓を打って、その音が皇居まで届いたなら、女御はお前に会ってもいいと言っているぞ!」老人は身分の違いの恋を恥じ、苦しみながらも、ひとめでも会うことができるのならばと、いそいそと桂の木に近づき、そして懸命に太鼓を打ちます。しかし、その太鼓には綾の絹が貼られていて、音がなるわけはありません。老人はしばらく必死に太鼓を叩いたあと、全てを悟ります。弄ばれたことを嘆き悲しみ、絶望し、そして池に身を投げ死んでしまいます。

臣下は女御にことの全てを伝えます。これを聞きショックを受けている女御の前に、恨みつらみで鬼と化した老人の亡霊が現れます。そして、「音なんか出るわけがない!お前が叩いてみろ!」と責め立てます。女御は泣き叫びますが、老人の亡霊は執拗に女御を責め続けます。そして恨みの炎は消えることなく、老人の亡霊は池の中へと消えていきます。

老人は生前はみすぼらしい身なりだったのですが、亡霊となった老人の着物は金糸・銀糸で飾られた煌びやかなもので、女御と並んでもひけをとりません。杖で床を叩き、足で床を叩き、舞台の上を行ったりきたり、髪を振り乱し、衣を翻し、老人の亡霊はその恨みの想いを女御に激しく訴えます。その想いの強さを、太鼓や笛や地謡の音が盛り上げていきます。

じゃーん!と最後の音が鳴り、舞台が終わります。そして会場はまたしーんと静まり返ります。その静寂の中、まずは老人の亡霊が、そして女御が、その後を臣下とナレーター兼脇役がしずしずと続き、舞台の袖へとすり足で消えていきます。ここで拍手が起こります。舞台中央に残った演者たちは、楽器を手際よく片付け、順番に舞台から消えていきます。そしてまた拍手が起こります。ここで会場はざわめきだし、なんとも言えない非現実的な時間から、現実へと引き戻されます。

一瞬たりとも目が離せない、あっという間の2時間半でした。ぜひまた戻りたい、神々しい時空間でした。

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