『秘クラ』的空間
ドアはガッシリ重く、きっちりロックされていた。
インターフォンを押すと、高音の機械みたいな女の人の声が、「お名前をお願いします」と言った。
わたしが、「予約してるXXです」というと、ガチャっとロックの開く音がして、わたしはドアを開けた。
右手に受付があって、看護婦みたいなユニフォームをきた女性が2人、ロボットみたいな笑顔を浮かべてた。
アンケートみたいなものを差しだされ、わたしはそれを持って、革張りの黒いソファーに深く腰をかけ、記入した。
アレルギー・・・大丈夫。 麻酔・・・大丈夫。
待つこと5分。 能面みたいな20代前半の女性が近寄ってきた。
「こちらへどうぞ」
わたしは彼女の後ろについて歩き、小さく区切られた個室へと案内された。
「そちらにお荷物を置いて、そちらにおかけください」
わたしは言われたとおりに、籐のバスケットの中にバッグをいれ、プラスティックの黒い椅子に腰掛けた。
「ご説明させていただきます」
女性はA4用紙に書かれた注意事項を、ゆっくりゆっくりと読み上げ、読んだ部分に丸をつけていった。
わたしの目の前に、サンプルを差し出す。
「どれがよろしいですか」
わたしはなかなか決めることができなくて、「どれが一番人気ですか?」と聞くと、女性は、「こちらですね」と、緑色を指差した。
「じゃ、それで」
女性は電卓も使わず、あれもこれもといろんな料金を足していき、2万1千円だと言った。 わたしだったら暗算はきっとできないなと思いながら、わたしは現金で支払った。
別の、もう少し広い部屋へ、案内される。
診察台みたいなものの上に正座するようにと言われわたしは、どちら側を向いたらいいのか分からずに、クルクルと廻ってしまった。
女性は一瞬、クスっと、ロボットの表情を崩して笑い、「こちらですよ」と言った。
言われたとおりにして、しばらくすると、30代前半の女性、女医みたいな服を着た人が現れた。
「女性同士ですから、恥ずかしくありませんよ」
「女性同士だって男性だって別に恥ずかしくないんだけど」と心の中で思いながら、わたしはワンピースを胸までたくしあげた。
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