北緯35度20分5.97秒
東経139度33分5.24秒
わたしたちは、日のあたる縁側に腰掛けていた。
目の前には、計算しつくされた美しい庭園が横たわっていた。
遠くから訪問してるだろうお年よりたちが去っていった後、
わたしたちだけが庭園を独占する時間が訪れて、
横に並んで座っていた彼が、わたしを背後から抱きしめた。
入場料を払った時にもらったお煎餅を、彼が小さく砕いて、わたしの口に運び、
わたしはそれを、母鳥からえさをもらう小鳥のように、
口をすぼめて、下の上に乗せ、そして奥歯でガリガリと噛み砕き、
その音が、静寂の中、響き渡った。
春のやわらかな日差しがわたしたちを包んでいる。
薄手の服の上から、太陽の熱がしみこみ、
しだいに肌の下、骨の芯まで伝わり、ココロまで温めた。
わたしは、ものすごく大きな幸せを感じつつ穏やかなキモチでいるのに、
同時に、今すぐ彼を縁側に押し倒してしまいたい衝動が生まれたことに驚いて、
斜め45度で振り返ると、彼の瞳の中に、わたしと同じ想いを見つけてしまって、
ふたりとも、それが妙に恥ずかしくて、照れ笑いをしたけど、
生まれてしまった欲情を持て余して、しばらく、無言のままで見つめあった。
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