Flashback
シンディローパーのGirls Just Want To Have Funが爆音で流れる。 私の背中を守っている彼が言った。 「すぐ戻ってくる、そこから動かないで」。 私にというより、私の回りにいる男たちに対して、「触るな」と念を送っているようだった。 大きな体をした彼が私に関してはとても心配性なのが可笑しくて、思わず吹き出した。 「大丈夫、何処にもいかないから、心配しないで行ってきて、そして早く戻ってきて」。
彼の指先がいつまでも名残惜しそうに私の背中に触れている。 やっと決心したように私の背中を離れる瞬間、彼がポツリと言った。 "You're mine." 「いいえ、私はあなたのものではないわ」 そう笑いながら言い返す私に、少し離れたところから彼が叫ぶ。 "You're mine!"
離れていく彼の後姿を見つめながら、そうであったらどんなに楽だろうとため息をつく。 お互いが抱える現実はあまりにも違いすぎる。 悲しいかな、私にも彼にもパートナーはいるというのに、気軽にそれでも本気で、 "You're mine" とはとても言えそうにない。 そんなことを考えていたら思わず泣きそうになる。 バーカウンターの後ろに張られた鏡には私が映っている。 "What am I doing here?"
隣に男が滑りこんできて言った。 「何か飲みませんか?」 邪魔だなぁ、消えてくれないかなぁと心の中で念じていたら、フッと男の気配が消えた。 安堵した次の瞬間、背中に感じるあたたかい気配で、彼が戻ってきたことを知る。 私を背後から囲む姿勢で、ごった返している店内で私を守ってくれている。
彼といると私は、絶対的な安心感に包まれる。 彼の視線の先には必ず私がいる。 私の一挙一動に一喜一憂する彼がいる。 今この世界に何が起ころうとも、彼が側にいれば、きっと大丈夫、必ず守ってもらえるという確信が私にはあるから、不思議だ。 一体なんだろう、この感覚は? 出会ってすぐに彼が 「僕は君を決して傷つけたりはしない」と誓ったから? それとも私たちには前世からの因縁か何かがあるのだろうか? 彼の声が頭の中でリピートされている。 "You're mine....You're mine....You're mine...."
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